声が押し寄せて来る

子午線の祀りは、

日本の演劇史上に叙事詩劇として燦然と輝く、木下順二の傑作だ。

平家物語を題材に壮大なスケールを持つ作品だ。

世田谷パブリックシアター開場20周年記念として、

いま公演中の舞台を観劇してきた。

子午線の祀りは天の視点から人間たちの葛藤を描き、

平知盛源義経を始めとする源平合戦にかかわった登場人物たちの心理描写を浮き彫りにしている。

日本語の語りの美しさと荘厳な響きを引き出す

群読という独特なスタイルが随所に用いられている。

まるで声の波が押し寄せてくるようだ。

どちらかといえば、視覚より、聴覚が刺激されることが多い。

その伝説的な舞台を、世田谷パブリックシアター芸術監督で狂言師野村萬斎さんが新たな演出を試み、自らも主役の平知盛役を熱演している。

かんたんなあらすじ。

歴史上名高い源平の合戦。

次第に平家の旗色は悪くなるばかり。

平宗盛河原崎國太郎に代わり平家軍を指揮する平知盛野村萬斎は、一の谷の合戦で、源義経成河の奇襲を受ける。

以来、武将となって初めて自分に疑いをもち、

知盛は舞姫影身の内侍若村麻由美を和平のため京へ遣わそうとする。平家を支える四国の豪族阿波民部重能村田雄浩は、三種の神器を楯に主戦論を唱え、知盛を立てて新しい日本国の存立を画策しようとする。知盛は平家滅亡を予感しながらも、後白河法皇の過酷な要求を拒絶し、徹底抗戦の道を選ぶのだった。一方、源義経は、兄頼朝から目付役として遣わされた梶原景時今井朋彦と対立しながらも、源氏方の先頭に立って慣れぬ海戦も乗り越えますます勢いづいていく。そしてついに両軍は壇の浦の決戦の日を迎える。

オープニング。

夜、星空のもと。語り手の萬斎さんの声が響く。

地球の中心から延びる一本の直線が、地表の一点に立って、空を見上げるあなたの足の裏から頭へ突き抜けて、どこまでもどこまでも延びて行き、無限のかなたで天球を貫く一点、天の頂き、天頂

萬斎さんのことばを借りれば、

話すとも喋るとも違う語る技法を模索した。

事実を客観的に叙事的に言っている時もあれば、

主役の内面を代弁したり心情を述べたりと

叙情的に言うときもある。

万劫まんごうの過去から尽未来際じんみらいさい

春は東作とうさくの思いを忘れ、

秋は西収さいしゅの営みにも及ばず

しだらないお人とはいっても

弓手へも馬手へも回しやすし

耳慣れない聞き慣れないことばが、ワンサカ出てくる。

稽古場で、みんな一緒に、身体で読み解き、

難しいことばを実感を込めて言う努力を積み重ねてきた。

身体を通過したことばは、たとえ意味がわからなくても、

聴衆の体内に

ことばの塊として入り込んでいくような気がする。

大波小波に乗って押し寄せて来る声が、

ことばの礫を耳の中に次投げかけてくる。

ことばの洪水の中で、妙な陶酔に浸っていた。

なんだか哲学的になってきたぞ。

影響されやすいボク。

子午線の祀りは、世田谷パブリックシアターで、

23日日まで公演中。