ナースコール

〜麻酔からの覚醒〜

キンコンともピンポンともフィンフォンとも聴こえる

電子音が、病棟の通路に優しく鳴り響く。

ナースステーションでは、どの部屋のどのベッドから

コールされたのかすぐに判るようになっているみたい

だけど、この病棟では更に、病室の入り口横の壁に設

置してある、ベッドの配置どおりに表示された入院患

者の名札代りの液晶モニターにも、コールした患者の

表示が何らかの形でされているようだ。

ステーションから急行できない不測の事態に備えてい

るのか、あるいは身近に居合わせた看護師が直ぐに駆

けつける事が出来るようなシステムなのかは不明だけ

ど、とにかく看護師は的確にコール発生元のベッドに

迷うことなく、患者の名前を呼びながらやってくる。

僕は手術を終え朦朧としていて、病室に戻る時のスト

レッチャーの音さえ聴こえない。

ベッドに移され酸素吸入マスクを装着しながら天井を

見るのもほんの数分で、ほどなく眠りについた。

気が付くと同時にナースコールの音が聴こえて来た。

術後直ぐよりは意識がはっきりしていて、この病室の

担当以外の看護師がコール発生元に向けて部屋に入っ

て来る気配が感じ取れた。

看護師はコール発生元の患者の名前は呼ばず、代わり

に小さく《あらっ?》と声を出した。

この四人部屋でナースコールをしたのは僕ではない。

隣のおじいちゃんはレントゲンを撮りに行っている。

はす向かいのおじさんは僕と入れ替えで手術に向けて

部屋を出ている。

看護師が《あらっ?》と声を洩らした理由は、部屋の

入り口横の液晶モニター表示では、僕の足元の方の向

かいの、名前が表示されていない空ベッドからとなっ

ていたから…

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